ボニボニ

 

My hotelier 156. - Welcome home - 

 




腕の中で なめらかな肌が動き 寝返りを打って抜け出ようとする。



逃がさない。 
出てゆく身体へ腕を伸ばして ハンターは 半身を引き戻した。
「ちょ・・・ねぇ・・?」

柔らかな下腹部を片手で包み もう一方の手は腿へ滑らせる。
そっと 指を挿し入れると ジニョンが息を呑みこんだ。


My hotelier? ・・愛して・・いるよ・・・



震えるうなじを柔らかく噛んで ゆっくり 指で中を探る。
僕のためにある 君の場所は 僕を抱いてくれるのかな?

ねだるような甘い問いを 何度も何度も 繰り返す。



追い立てるように聞くうちに 君が 絹の声をあげた。





・・・入れてもらえるかな?

「もぉ・・・私が断れなくなってから・・聞かないで」
「職業病かな つい駆け引きをしてしまうんだ。 でも 君は今日休みだろう?」
「ドンヒョクssi、会社に遅れるわよ? ・・・痛っ!」

パン! とドンヒョクがお尻を叩く。 ジニョンまったく また忘れているな。 

「不安だよ。 僕は 本当に君に愛されているのだろうか?」
「え?」
今日は一体 何日だろうね ソ支配人?
「何日って15日? ・・・オモ!」

「Congratulation」



サファイアハウスの朝6時。 半身たちはクスクスと 笑いながら1つになった。

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「・・・おい? ジニョンは個別休か?」

支配人オフィスのソファに座って ノ料理長が 糸の眼を上げた。
あいつの休みに当たったのか。 今夜のディナーは どうするつもりだ?



「えぇ。 ジニョンは今日シフトで休・・。 オモ!! 今日はアレ?」
「わあ! ソ支配人休み?! じゃあ ホテルに来ないのかしら?」



ソウルホテルのホテリアー達にとって ほんのちょっと 特別な日。



彼らの愛するハンターが もう一度 
そして 永遠のチェックインをした 記念日。



その日は 嬉しげなドンヒョクが ロビーへ半身を迎えに来て
照れくさそうに寄ってくるジニョンを 輝く笑顔で抱きしめる。
それはまるでアニュアルイベントのように 皆の 楽しみになっていた。


「うん? ソ支配人が休みなのか?」

まいったな。 今日にあわせてあのワインを スタンバイさせておいたのに。
申し送りのメモを取りながら ソムリエは軽く眉をしかめる。
料理長の今夜のスペシャリテとは 驚異のマリアージュなんだけどなあ・・・

「え~っ?! ソ支配人休みなの~?!」

アタシ花束作ったのになぁ。 ついでに理事にも・・ってブートニアも。
私がお付けしましょうって 理事に 大接近のチャンスだったのに。



「?」

ホテリアー達に落ち着きがない。

そこここに スタッフの不満顔が見える。
ふくれっ面と落胆のため息。 テジュンは 不思議そうに周囲を見回した。 
  
「・・・一体 何事だ?」

秘書は書き物から眼を上げず 社長の問いに 憮然と答える。
「ソ支配人が休みなんです」


「あいつが休みってだけで 皆がこんな有様なのか? ・・そんなに人気あったっけ?」

はぁ・・、社長はいい方なんだけど。  秘書は そっと嘆息する。
「理事ですよ! 今日はチェックイン記念日なのに・・来ないのかしら?」


私は「アレ」が見たくって 自分のデートを動かしたのに・・。

思わず手に勢いがついて バン!とファイルが音を立てて閉じる。
普段は柔和な秘書の不機嫌に テジュンがビクリと 身をすくませた。

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ジニョン ジニョン こっちへおいで。



シーツの上を腕が伸びて 白い身体を抱き寄せる。
「もぉ・・せっかくのお休みが ベッドの中で終わっちゃうわ」



「・・それは・・ 至極 有意義な休日の過ごし方だと思うけど?」
そんなに休日が欲しいのなら いつでも仕事を辞めていいのに。
「ドンヒョクssi・・・・?」

「ジョークだよ もちろん。 怒らないでもらいたい」

君を ホテルから引き離すことは とっくの昔に諦めているよ。
だから 僕は今こうして ソウルホテルのストックホルダー(株主)をやっている。
「君はいい脚をしているけれど “僕のホテル”も 素敵だからね」

何があっても 今日一日は ジニョンと甘く過ごすんだ。

強い決意のハンターは 愛しい獲物をまた 組み伏せた。



PPPPPP・・・・・

「ドンヒョクssi? ねえ あなたの・・ 携帯が鳴っているわ」
「電源を切り忘れただけだ。 気にすることはない」
「でも・・ぉ、ねぇ出てよ。 急用だったらいけないもの」

憤然としたハンターが ベッドサイドの携帯をつかむ。
ジニョンの携帯は今日の為に いち早く 電源OFFにしたのに
僕の携帯に 今日かけてくる命知らずがいるとは思わなかった。
「?!」 


“ハン・テジュン”

あなたか? 今頃・・・何の用だ?

着信表示をにらみつけて ベッドのハンターは絶句する。
それでも彼が電話に出たのは ジニョンに 着信を見られたくないからだった。
「・・・Hello?」

お楽しみ中すまないな。 良ければ ジニョンに伝えてもらえないだろうか?
「フロントに ソ支配人に逢いたいと言う“お客様”が来ているんだ」

「・・・今日 妻は休みのはずですが?」
「解っている。 伝言してくれなくても かまわないよ」
「!」

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ソウルホテルの 19時半。

慌てて呼ばれたソ支配人は フロントで少しむくれている。
「ねえ! 社長は “私に会いたいお客様が来ている”って言ったのよ?」
「・・・そうなんですか?」
「なのに。 誰もいないじゃない?! もぉ!これじゃまた ドンヒョクssiの機嫌が悪く・・」


「オモ! ソ支配人!! お見えです!」

「・・・え?」


マシンガントークの支配人は エントランスへ眼をやって すべての事を理解した。

あの日のままのスーツを着て 片手をラフにポケットへ挿して。
3年前と同じ場所へ その人は まっすぐ歩を運び 
フローリストが用意した小さなブーケを 片手に持って立ち尽くした。

「・・・・ドンヒョクssi・・・」


週末に近いホテルのロビーは 訪れる人が いつもより多い。
フロアを行き交うホテリアー達も お客様の対応に忙しそうだ。 ・・・だけど
「ねえ? ・・私の 気のせいだと思う?」

皆が 待っている気がするの。 決して仕事の手を止めないままで。

ジニョンが フロントカウンターを出る。 
一歩 一歩と 歩き出す。
ベルスタッフが ギャルソンヌが ドアパースンが目の端で見る。


自分達のホテルで起こる 1年に1度の小さな奇跡。
ジニョンがドンヒョクの前に立って 照れくさそうにつぶやいた。
「今後 5月15日には絶対 休みを取らないことにするわ」
「・・・そうだね」


本当にそうだね My hotelier,  うかつなことに 忘れていたよ。

僕は 君をホテルごと 抱きしめて手に入れたんだ。
君へ帰ってきたと同時に 僕は ここへも帰ってきた。

ジニョンを腕に抱きしめて ドンヒョクは エントランスフロアを見回す。
コーヒーを入れるバリスタと タクシーを呼ぶドアーパースン
いつのまにか僕の周りは かくも 賑やかな場所になった。


「ジニョン?」
「だめよ」
「・・・・ジニョン?」
それはだめ! という制止は ハンターのキスに飲み込まれる。



ソウルホテルの夜20時。

ロビーラウンジの恋人に ホテリアー達は見ぬふりをする。

その頃 メインダイニングでは ソムリエがポン・・とワインを抜いた。 

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