ボニボニ

 

JUNIな生活  クラックーひび割れ― ①

 




ブロードウェイ&チェンバーズで ジュニを見かけた。



そりゃあ ね。 

もう何ブロックか南へ下がれば ウォールストリートになる訳だし
街角でジュニを見たからと言って 全然 不思議じゃないんだけど。



アタシが足を止めたのは 最初からジュニだと気づいたからじゃなくて。

なんか エリートって感じのビジネスマンがいるなぁ~と
単純に感心して 見ていたの。



バンク・オブ・アメリカから出てきたジュニは 中年の白人男性と一緒だった。

連れの白人さんというのがまた 
『リッチです光線』を360°放射してるみたいなおじさんで。


普通そんな人と並んだら アジア人は見劣りしそうじゃん?

なのにジュニは 完全におじさんを脇役に回すキラキラ具合で
黒塗りの つまりキャブじゃない車に 悠然と2人で乗り込んで行った。



ほわぁ・・

ぼーっとながめている途中で いきなり意識のピントが合った。

アタシってばつまり自分のオットを 一瞬他人の眼で見ていた訳で。
そして 他人の眼で見たジュニは 


・・・「アタシとは違う世界のヒト」だった。



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「茜さん。 こんな所で うたたねしてはいけません」

「・・ぇ? ひあっ!」



ジュニってば。 いきなり腕を差し入れて よいしょっとアタシを持ち上げた。
ちゃんとベッドで寝ましょうって ずんずん ベッドルームへ歩く。

アタシをベッドへ置いたジュニは 横を向いてスーツを脱ぎ始める。

眼が飛び出る位高いアルマーニのスーツ。 今では ジュニの平日の服だ。




「・・ですか?」

「?」



スリープモードから戻らないまま ぼんやりジュニを見ていたから
ジュニの言葉を聞きのがした。

ジュニは シャツのボタンを2つ外したところで 動きを止めて眼を伏せる。

ゆっくり頬を回したジュニは  ・・はれ? なんか・・怒ってる?


「どうして 返事をしないのですか?」

「ぇ? あの・・聞こえなくて」
「そうですか」
「何て 言ったの?」

「・・・」



ゴクリ と思わず喉が鳴った。 

ゆっくりまばたきしたジュニは 寝ているアタシに馬乗りになると
顔の左右に手をついて 真上からアタシを見下ろした。

「ダウンタウンへ行ったんですか? と聞きました」

「あ・・」



それじゃあ ジュニも気づいたんだ。 まったくこっちを見てなかったのに。

「ブロードウェイ&チェンバーズで会った・・よね?」
「ええ」


じいっと見つめたままジュニは アタシにおおいかぶさってくる。
んくんくキスして ちょっと離れて アタシの瞳を覗き込む。

「どうして 僕を見て逃げたのですか?」

「は?」



ジュニはあの時 車に乗るまで アタシに気づかなかったそーだ。

車の中から周囲を見まわし 舗道に立っているアタシを見つけて
ワオ茜さんだと窓を開けようとした瞬間 アタシがまわれ右をしたらしい。

「に、逃げてないよぉ」



それでワニ目か。  

ジュニの奴は アタシをラピュタロボット視線でスキャンしている。
だって ジュニは仕事中だったし 車に乗って行っちゃったじゃない。

「あの車 窓はミラーになってて ジュニが見たのはわかんなかったもん」

「ぁ・・」



そうですか。 ジュニはほっとした顔になって アタシの首筋へ顔を埋めた。

ごめんなさい僕 茜さんが逃げたように感じてしまいました。


そう言いながら ジュニの関心はもうメイクラブに移ったみたい。
いいですよね?って Tシャツをめくると どんどんアタシを剥き始める。

ブラもホックを外しただけで めくり上げて乳房に吸いつくし

Gパンごと えいえいとショーツを脱がして 身体で腿を大きく開ける。



今日のジュニは とにかくアタシに入らないと安心できないみたい。

半分寝ているアタシの中を 怒張した先っぽで押し分けるように進んで
自分をみっちり埋めてしまってから やっと はぁ・・と落ち着いた。


「愛しています。 茜さんも?」
「ん」
「あぁ良かった! 今日は僕 茜さんが離れて行ったような気がしました」

「・・・」



動きますね。 すっかり機嫌を直したジュニは ゆっくり退いて戻ってくる。
茜さんのココが寝ぼすけだから 僕が起こしてあげましょう。

ジュニが大きく行ったり来たり。 その度にアタシの胸が揺れる。

奴にはそれが嬉しいらしくて 片手でアタシを抱き寄せると胸の間に顔を埋める。


ずんずん強く突き上げられるけど がっちりフォールされてるから
アタシは どこへも逃げられなくて ジュニの腕の中で反りかえる。

・・・・ぁ・・ぁ・・・ああ・・!


行ってください。 声は甘いけど 中にいるジュニは悪魔みたいだ。

アタシは切ない鳴き声で ジュニに降伏の合図をしながら
やっぱりジュニは アタシの事になると カンが鋭いなって思った。 


“ねぇジュニ? アタシ 逃げたかもしれない。何でかよくわからないけど”



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N.Y.に住んで 2年半。

近頃 アタシはフーフ間の「階級格差」に ちょっとメゲてる。



もちろん日本にいた時だって アタシはパンピー学生で
ジュニは将来を嘱望される 超超超エリート学生だった訳だけど。

投資銀行で働き始めたジュニは ビジネスエグゼクティヴって言うのかな?

びっくりするような年収を取る 「オトナ世界のヒト」になってしまった。


片やアタシは  F.I.T.で ファッションマネジメントを学ぶ学生で。
肩書だけ見たら 前途明るい若者ってことになるんだろうけど・・。




アタシは F.I.T.の最初のコースを この夏めでたく修了した。

あっという間の2年だった。 
自分に 社会に出るだけのスキルがついたのかもわからない。

それでも もう「学生」という身分を失くしてしまうアタシは

オーゲサに言えば 人生の岐路で どっちへ行こうか途方にくれているのだ。





ア・カ・ネ・さん♪

ジュニが背中にぴっとり張り付いて 機嫌よくうなじへ唇をつけた。
今夜はこれでお終いですか? ちょっと 慌ただしかったですね。

「ジュニが慌ただしかったんじゃん」

「そうですね。 ごめんなさい」



今度はゆっくり愛し合いませんかって ジュニの手がそろそろと胸を揉む。

お尻にくっつく奴の一部は すっかりその気で自己主張してるけど
ジュニのヤローはアタシの同意を 取りつけようと慎重だ。



こういう時の奴ってば 反則と言いたいくらい誘惑するのが上手い。

ゆっくり胸を弄ぶ指が 痛くないギリギリで先っぽをつまむ。

反対の手は 絹を撫でるみたいに なめらかにお腹を撫で下りて
ぁ・・と気づいた時にはもう 柔いひだの中へもぐりこんでる。


入り口にある小さなボタンを 慣れた手つきで探るジュニは

アタシの耳に だめですかって 子犬みたいなもろい声で言う。


きゅぅ・・ん・・ 

ああもう イッてしまった。 アタシの中がビクビク震える。 

ジュニは挿し入れた指先で 震えを最後まで感じてしまうと
O.K.ですね?と言わんばかりに 腰をつかんで後ろから2度目を始めた。


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「来週 僕とパーティーへ 一緒に行ってくれませんか?」


すっかり満足したジュニは 抱きしめたままアタシを揺すっている。
茜さんの学校仲間にくらべると オジサンばかりでつまらないでしょうけど。

「仕事の・・パーティー?」

「まぁそうです 先端技術のシンポジウムで。 懇親会があるんです」
「先端・・技術・・」

僕が結婚していることを知ったクライアントが 驚いて

「僕の奥さんに会ってみたいと言って聞かないんです」

「え~・・・」


嫌だなぁ。 それって アタシの最も苦手とするパターン。

ジュニの嫁が「コレ」ですか?って 行く前から先方の落胆が見えそう。

アタシの顔色が沈んでも 背中のジュニは気づかない。

「茜さんを連れてパーティー」は 奴のもっとも嬉しいイベントだ。




クライアントの望みなら 行った方がいいんだろうな・・

鼻歌まじりのジュニに揺られて アタシはちょっぴりブルーに思った。


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