ボニボニ

 

JUNI 17

 


ジュニが 不穏な奴になっている。

どうやらあいつは 渋谷で買ったモノを 使いたいらしい。


「茜さん 今日は 勉強しに来ませんか?」
「・・・行かない。」 
絶対ヤダと逃げるアタシに ジュニはじりじり 匍匐前進してくる。

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まったく何で ああ 悪知恵が働くかな ジュニは・・。


危険な場所には行けない と  ジュニの部屋へ行くのを避け続けていたら 
あいつってば ご飯の時にわざとらしく 成績の話をもちだした。

「・・・・ああ そうだ 茜さん? この前の実力テストは どうでした?」
「そうそう! 茜ってば すごいの! ジュニちゃんのお陰よ♪」


アタシがそっぽ向こうとしても ママは ジュニの敷いたレールの上を
しゅしゅぽっぽ、しゅしゅぽっぽ、と 走り出す。  とほほ・・


「216人中53番よ 53番!」
「茜さんは 実力があるんです。 勉強する習慣をきちんとつければ もっと伸びます。
 “ちゃんとした指導を受ければ”ヒトケタだって 十分狙えると思います。」

こ・・の・・ペテン師。 ママがエサに 食いつきそうだ。

「そうかしら~? でもぉ きっとジュニちゃんの教え方がいいのよね?」
「そんなことないです。 でも僕 人に物を教えるのが上手いとは 言われます。」


Fish On!   ・・・・釣れました ママ一匹。

「あの・・ジュニちゃん? 忙しいだろうけど 負担にならない程度でいいから 
 出来るだけ 茜の勉強を見てやってくれないかしら?」 

もちろんですよ。 ママさんのケーキの為なら お安い御用です。
ジュニの とびきり清潔な笑顔に ママってば ちょっぴり見とれてたわね。


「あっ 僕 今日は時間があるから “来てもいいですよ”茜さん。」
「・・・・・。」


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ママに背中を押されるように  ジュニの部屋へと 2人で向う。
「・・・成績 ヒトケタも狙えるなんて。 大風呂敷。」


すぐママを抱きこむんだから・・と アタシは 口をとがらせる。

並んで歩くジュニは ?と眉をあげる。 ・・・ちょっと 素敵な表情だ。
「嘘じゃ ないです。 茜さんは 教えればもっと伸びます。」
他の大学に行くのなら 本気で教えます。 でも 勉強だけが大事じゃないですからね。


部屋に入るや そそくさと アタシは机に向かう。  ジュニは ベッドに腰掛けて
椅子ごとアタシを引き寄せて  クルリ とロクロみたいに回した。
「今日は勉強熱心なんですね? 受験 ねらいますか?」
「・・・そんなのまだ 考えてないよ。」


ああ やっと茜さんが来ました。 ジュニってば 嬉しそうにアタシを抱き寄せる。
アタシは腹話術の人形みたいにジュニの膝に乗せられて 髪を撫でてもらう。
「・・・茜さんは 将来 どんな道に進みたいんですか?」
「まだ・・わからないよ。」
僕と一緒に ・・・生きてくれるでしょう?
「・・・・・・。」

今日も 答えてくれないんですか? 茜さんは いじわるです。
困ったように笑ったジュニはアタシの顎をつかまえて もどかしそうにキスをする。
アタシの腕を自分に巻きつけて 力いっぱい抱きしめる。

「僕のものです。 そうですよね?」


ジュニはずるい。 
こんなとき いいですか?と聞かないの。
ボタンをぷちぷち開けながら ときどき だめかな?って 眼で問いかける。
アタシは 外されてゆくボタンを見ながら きれいなジュニの指に 見とれる。
  
服を脱がすのが ジュニはすごく早くなった。 アタシは あっという間に裸ンボだ。
大きな手で大事そうに撫でられる。 ジュニは じいっとアタシを見つめている。
「・・・なに?」
「僕を 好きですか・・?」

探るように見るジュニの眼と 挑むように受けるアタシの眼がぶつかって
その真ん中で  アタシの身体が アタシを裏切る音をたてる。
ちゅく・・ちゅく・・ちゅく・・って。
ジュニの長い指ときたら アタシを もうすっかり憶えてしまって 
自由自在に アタシに声を上げさせる。


ゆっくりまばたきしていたアタシが こらえきれない快感に眼を閉じると
安心したように ジュニがうなじに吸いついてくる。
「愛しています。 ・・・ちゃんと聞いていますか? 茜さん。 」

「・・・・あ・・・・」

ジュニは アタシを抱けば それだけ自分のものになると思ってるのかな?


首や頬に 頬ずりをしながら ねだるようにジュニが囁く。
茜さん 我慢しちゃだめです。さあ 行って・・。
あっと声が高くなって アタシの顎が上がると ジュニがふんわり抱きしめた。

力の抜けたアタシを ジュニが 愛しげな眼で見る。

優しいキスを1つしてから いつものように ゆっくり服を脱ぎはじめる。
アタシはその時 薄目をあけて  きれいな横顔を 盗み見る。
ジュニは 柔らかくうつむいて服を脱ぐ。 内緒だけど アタシが一番好きな顔。


シャツの下から 凶暴な身体が出てくると アタシは少し怯える。
ジュニはアタシが怖がるのを見て なだめるような笑顔を作る。 大丈夫ですよ茜さん。


膝小僧を左右に倒して ジュニが そっとアタシを開く。 
もう“いや”は 聞きません。 ふっと笑ったジュニが アタシの中へ少しだけ入る。

「茜さん・・。 好きと言ってください。」
いじわる。 うるんだ目のアタシに 好きと言わせるのが大好物。
「聞かせてください。 僕を 好きですか?」
「・・・好・き・・。」

ああ良かった  とジュニが弾むように突き当りまでやって来て アタシがきしむ。
「このところ茜さんは 僕が誘っても 逃げてばかりでした。」
「・・・。」
「嫌われたかなってすごく心配でした。 今日は いっぱい抱かせてください。」

アタシの胸を あむあむと柔らかく噛んで ジュニが 動きだす。
温かい胸の下で揺れながら アタシは 悲しくなってゆく。


ジュニが好きだ。 

後戻りもできないほど アタシはもう ジュニが好きだ。
優しいところも 怖いところも 伏せたまつげも 好色な指も・・・


だから悲しい。 ジュニが アタシを見てくれないことが 悲しい。

ママを亡くして泣いてるジュニを抱きしめた 5歳の  過去の アタシのおかげで 
アタシは ジュニに抱かれている。 
アタシのどこが素敵だったわけでもなく アタシが “昔 茜ちゃんだったから”
今のアタシは 愛される。


アタシ・・・ この悲しさを ずっとこらえていけるかな?

いつだってジュニは言う。 “僕を愛してくれませんか?”
ジュニ。 心の中で アタシはずっと叫んでる。 “アタシ を愛してくれませんか。”


悲しさと快楽の中でゆらゆら揺れていると  ジュニが両手で頬を包んだ。
「茜さん? 何を・・・考えているんですか?」
「・・・・何にも。」
「今日の茜さんはなんだか悲しそうです。 嫌・・でした? 僕は 強引でしたか?」

ジュニの深い眼を 覗きこむ。 不安と愛しさが混じった瞳が まっすぐこちらを見る。
「・・・?  なんだか・・・甘い香りがするね。」
「『青りんごの香りつき』です。 いちごのほうが 良かったですか?」


げ・・・ 忘れてた。 ジュニの奴。

「な・・なんだって あんな店へ行くのよ! 恥ずかしい。」

ジュニの下で アタシは じたばた逃げようとするけど 慌ててジュニが押さえこむ。
こいつ アタシより2~3本 手足が多いんじゃないの?
脚や肘で 完全にアタシを動けなくして おまけに にっこり髪まですいている。

「離してよ。」
「だめですよ。 ちゃんと 僕の言い分も 聞いてください。」
男が こういうコトをきちんと考えてあげるのは 相手へのマナーです。
ママになるには 茜さん まだ若すぎるから。バースコントロールは必要でしょう?

「あ! ひょっとして茜さんは産みたいんですか? それなら僕はがんばります。」
「ア・・アタシは 別に。」


ふふふ 僕たちのベビー 可愛いでしょうね。
「茜さんさえ良ければ 僕は いっぱい 子どもが欲しいです。」
すりすりと ジュニはアタシに頬ずりをする。 ジュニの明るい家族計画。
何だか アタシはめまいがしそう・・・・。

「ねえ茜さん。 続きをしてもいいですか? 僕 我慢できないです。」

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次の日 学校が終わる時間。 ジュニが校門の外にいて アタシを驚かせた。

アタシの通う女子高では 校門前の「お出迎え」はよくあることだ。
だけどジュニ・・・。 お願いだから お出迎えは勘弁して欲しい。
アンタ とにかく目立つんだから。 下校していく皆の視線が 一直線じゃん。


「茜さん♪」

ぴっかぴかの ジュニの笑顔。 周りの女子生徒が はぁ・・と言う。
アタシは 別の意味で はぁ・・とため息。 彼と 並びたくないんだけどな。 
「どうしたの? 大学は?」
「行きましたよ。 でも 昨夜の茜さんを思い出したら 会いたくなって・・ふふ。」
「・・・こ・・声がでかいよ。」
「あ すみません。」


ジュニの唇が アタシの耳にくっついて アタシは 顔が茹でダコになる。
「昨日の茜さん いっぱい感じてましたね? すごく素敵でした。 また抱きたいです。」
「ば・・・ば・・・」

思わずまわりを見回した時  道の向こうの一点に 目がとまる。
「!」
こんなシチュエーションって最低だ。 アタシは いきなり凍りつく。
「茜さん?」
ジュニが アタシの視線をたどって行って・・・ ぎゅっと 私を抱き寄せる。


「ジュニ・・・。」



恐る恐る見上げると ジュニはまっすぐ圭太をにらんで 氷の焔を立てていた。

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