ボニボニ

 

JUNI それからstory 17 おまけ

 




「パパさんに やられました。」


せっかく2人で旅行に来たというのに もうすぐ 出発しなくちゃいけない。
「これでは 愛し合う時間がないじゃないですか。」
「しぃ・・・! ・・・声が でかいよ。」


ジュニのヤローはマヌケなことに 今頃 パパのたくらみに気づいたらしい。

カウントダウンの後は食堂へ戻って 今度は 新年の祝い酒で
やっと宴が終わった頃には もう 空港へ行くまで数時間だった。



それでもジュニは 宿泊棟のアタシの部屋へ忍んで来て
ひと足先に仮眠していたアタシのベッドへ 足元からもぐりこむ。

「あ・か・ね・さん。」
「・・うわっ びっくり。 ジュ ジュニってば ・・・皆に見つかるよ。」
「大丈夫です。 僕は もう荷物も持って 部屋にカギをかけてきましたから。」


朝は 茜さんの荷物持ちに来ましたって顔で 普通に出れば平気です。
だから・・・ね?  
だめに決まっているじゃない!  
今夜は 隣の部屋にも人がいるもん。



大丈夫です!隣はGSA地底郵便局をやってくれた担当さんで大酒呑んで大いびきで・・


「だから しぃ・・ってば!」
「キスさせてくれたら 黙ります。」

正月早々 この悪魔は・・ 

ジュニのヤローはもう何にも言わないで アタシの頬を撫でている。
キスだけだよ。 
奴を止めてた手をゆるめると ジュニが 腕の中へ滑りこんだ。
 



身体の下に抱いたアタシを ジュニは うっとりと覗きこむ。


片手で髪をすきながら 片手で アタシの身体を撫でて
ちゃんと挿さっているかなと 2人のジョイント部分を確かめて
触られたアタシがキャンと鳴くと ほどけるような笑顔になった。 



ふふ・・ 茜さん。 明けましておめでとうございます。


「ジュニの嘘つき。」
「嘘はついていません。 キスだけなんて 僕は 約束しませんでした。」


新年ですから僕もおとしだまが欲しいですって。 ジュニは 年下からもらうつもり?
「動いてもいいですか?」
「だめ。」

おねがい、 おねがい、 おねがい、 おねがい・・・
また。 こ、こらあ そんな反則。


「嫌い。」
ぴたり と見事に固まったジュニは 慌ててアタシの表情を読む。
アタシは 怒っていない眼を見られないように 眼を閉じたままそっぽをむいた。


ジュニが アタシの機嫌をさぐる。 
アタシの中に挿さったジュニも おどおど ご機嫌伺いをする。


アタシの身体をすっぽり覆う ジュニの大きくて 厚い胸。
優しい顔からは信じられないほど太い腕が 世界を背中に アタシを守る。


アタシが盛り上がった胸筋を指でなぞると ジュニは指先とアタシを見て 
されるがままに じっとしていた。

「愛しています。 嫌いというのは ・・・嘘ですね?」
「ん。」
「僕を 好きですか?」
「ん・・。」


だめです。ちゃんと言ってくださいと ジュニがアタシをすくい取る。
首に抱きついて好きと言ったら アタシの中のジュニが 小躍りした。


-----



家へ着いたのは ほとんどお昼だったけど 
パパとママは お屠蘇を前に 待っていてくれた。


昨夜はアタシ達がいないから 2人で2年参りに行ったらしい。

「んふ♪ 思い出の深大寺に行ったのよ~。 寒いから 熱いお蕎麦が美味しかった~。」
ね~え “総ちゃん”?
「う・・うん。」



高坂 総一郎というのが パパの名前で
ママは時々 パパのことを“総ちゃん”と 昔の呼び名で呼ぶ。
その名前で呼ばれるとパパってば 気分がコイビト時代に戻るらしくて
いつにも増して ママに弱くなるから 見ていて すんげー面白い。


「あー。 お・・お前達はどうしたんだ? 年越しは?」


偉っそうに お屠蘇を皆に振舞いながら パパは ジュニに家長ぶってる。
ジュニってば 杯を受けると横を向いて 口元を手で隠して杯を干した。 


・・これ 見た事がある。 韓国の作法だ。
ママは ほーって感心して ジュニの所作に見惚れている。
やっぱりそうやって飲むのねえって。 ママめ 韓国ドラマで見たな。



「僕らはカミオカンデの上でカウントダウンをして ・・それから 朝方まで宴会でした。」

そうかそうかと パパの奴は 目尻が5センチも下がっている。
俺の作戦は成功だ!って きっと満足しているんだろう。

ねえパパ? ジュニの煩悩は パパの妨害にも負けなかったよ。

まーあ それじゃ徹夜でとんぼ返り? ママが気の毒そうに言った。





「去年はさー。 ジウォンがいたんだよな~! ああ あいつ また来ないかな~・・・。」
おせちをつまみにお酒を飲んで パパはぐずぐず愚痴を言う。
ホントにパパってば ジュニパパが大好きだ。


「なあ ジュニ? 今年はあいつ 何でこねーんだ?」
「・・ええ 僕が神岡に行くと言ったし どなたかのお屋敷へ呼ばれたそうです。」

旧正月に帰国したら 帰りに寄りたいと言っていました。

「本当かっ!?」
「・・・ええ。」
「よぉしっ! よし!」

茜がジュニに嫁いだら俺とジウォンは親戚だ。そうなりゃ もっと頻繁に会えるよなあ。

むふふ とパパは上機嫌。
「仲良くしろよ~ぉ お前ら。 婚約解消なんかするなよな。」
「はいっ!」


ジュニは 頬を紅潮させて パパの言葉が すごーく嬉しかったみたい。
声が軽く裏返っちゃって 小学1年生みたいな よいお返事。
パパは ジュニの張り切りぶりに ビビって
あ~・・・その 健全な交際をなと もしょもしょ 口の中でつぶやいた。





「あっ! おこた やっぱり出したんだ?」
パパがソファで寝てしまったので TVを見に和室へ行くと
デン!と大きな こたつが出ていた。

「うーん。パパが寝て風邪を引くから できれば出したくないんだけど・・・。」

パパはすんげーコンサバな(?)趣味で お正月には“おこたでミカン”が 絶対だ。

部屋が散らかるからママは大嫌いなんだけど 
パパの駄々っ子に毎年負けて お正月から和室へ出てくる。



「これは? “おこた”と言うものなのですか?」

ジュニが珍しそうに見る。 
そうか。 去年はここにジュニパパがいたから おこたが出なかったんだ。

「“こたつ” って 言うんだ。 温かいよ。」
「ふうん・・。」



ぬくぬく布団にもぐりこんだら  ジュニは いそいそと横へ入ってきた。
「ち・・ちょっと。 ジュニはそっち! 1辺に1人ずつ座るの。」
「それは 規則ですか?」
規則じゃないけど・・・。 そういうもんなの。


4人以上のお宅なら 並ぶのもありでしょう? それなら僕はここがいいです。
無理矢理 隣に身体を押し込んで ジュニはこたつが気に入ったらしい。




「まー。 仲良しねえ。」
ぎゅうぎゅう詰めで 座っていたら 菓子鉢を持ってママが来た。
「ママさんも並びますか? どうぞどうぞ。」

「それは~ おこたが壊れるわねえ~。 はい ミカンとおせんべい♪」

-----



これは・・・魔物のような器具です。


ジュニは3つ目のミカンを剥きながら 心底感心したように アタシに言った。
アタシはうつぶせでおこたにもぐって TV雑誌をめくっていた。

「ここへ入ると 出たくなくなりますね。」

そうなんだよ。 だからパパは居眠りをしては 毎年コタツで風邪引くの。



「温熱効果で喉が渇いて ミカンがいくつでも美味しいです。」
「韓国には おこたはないの?」
韓国はオンドルですから 言うならば部屋中がこたつですけど。


うふふと ジュニはアタシの横へ 片肘をついて添い寝する。
「昼から堂々 茜さんと“同衾”できて。 最高ですね こたつって。」
「だ・か・らぁ 普通は そんなにくっついて入らないんだってば。」
「でも 僕は ここがいいです。」


家のおこたは大きいけれど それでもジュニと並んじゃ 窮屈だ。
他の辺に逃げようとしても  ジュニが ・・放してくれないよ。



パパはリビングのソファで寝ちゃって 
ママは 小岩さんのとこへお年賀持っていったきり。(きっと話こんでるのだろう)
TVは騒々しいバラエティだけど 元旦の家の中は 静かなものだ。


「茜さん♪」
ジュニは TV雑誌と顔を並べて アタシの視界に入ってくる。
「な・・に?」
「キスをしましょうか。」


パパが起きるよと言う間もなく ジュニの手に頭を引き寄せられて
キスは ミカンの味がした。
「んん・・・。」



大きな胸にうつぶせたら ことん ことん と心臓の音がした。
ジュニは愛しげな顔をして ゆっくり ゆっくり アタシの髪を撫でる。

「・・・茜さんを 抱きたいな。 僕の部屋へ行きませんか・・?」
「・・ん・・・。」 

行きませんかと言ったくせに ジュニは アタシを撫でつづける。
ぬくぬく抱かれて 撫でられるうちに トロトロ眠くなってくる。


「・・・僕を 好き・・ですか?」
「好き・・。」
「・・・部屋へ 行きましょうか。」
「・・う・・ん。」


アタシを撫でるジュニの手は だんだん ゆっくりになってきて
時々 少し 止まっては また思い出したように動き出す。
そうだよね。 昨夜からほとんど寝ていない。
「ジュ・・ニ?」
「・・・は・・い・・・。」
「寝よ・・か・・。」
「そ・・で・・すね・・・。」


ママが お年賀から帰って来た時。
パパはソファで爆睡で ジュニとアタシはコタツにもぐって こっちも爆睡。


その夜 お夕飯のテーブルで  アタシたちは3人まとめて叱られた。

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